「移動稽古( transfer training )」と
「突き・蹴り・技の切れ!」についての科学的論理( seientific logic )

【移動稽古( transfer training )】

transfer training は、空手道の稽古に於いて基本稽古と同様に、突き・受け・蹴りなどの身体動作( body motion )をつかさどる要となっている。
この transfer training の important element を五つ紹介したい。

一つは、適切な重心移動の方法( center of grarity travel method ) とその rhythm senseを体得すること。
二つは、全身の筋力より maximum torque を得る system とその rhythm sense を体得すること。
三つは、全身の筋力の maximum torque を smooth に連動させ且つ、それを maximumに開放する system と rhythm sense を体得すること。
四つは、transfer 時の step によって増幅される運動エネルギー( kinetic energy )の有効活用法とその rhythm sense を体得すること。
五つは、突き・受け・蹴り・技の動作時に於ける balance を強化することである。

空手道の lesson に於いてこの transfer training を略して、組み手の突き・蹴りなどのcombination training を行っても決して上達はしない。何故なら、kick boxing 系格闘技と空手道とは、闘い方に根本的( fundamental )な違いがあるからである。
胆略的に考えると「 拳に globe を着用するか、、、しないか、、、。」の違いではないかと考えがちであるが、拳に globe を着用するのと、そうでないのでは身体機能の使い方に大きな違いが発生するものである。
この違いについて多くを述べることは控えさせてもらうが、kick boxing 系格闘技と空手道では拳の握り方、拳を hit させる時の握力の使い方にも fundamental な違いがある。この fundamental な違いは、更には身体動作の活用の system にまで及ぶものである。

transfer training が十分に正しく体得できている人とそうでない人では、mitt を蹴った時に
もその違いが見てとれるものである。
transfer training を十分に積んだ人は、先ず軸脚の筋力の活用が上手い。
上体の前後、左右のブレが少なく、軸脚と腰・体幹筋力の torque が impact 直前までmaximumに溜め込まれ、impact 時に一瞬にして解放される。更にその energy は膝・足首(肩・肘・手首)の瞬発力へと上手く連携され、wait が乗ったsharp で「切れ」のある突き・受け・蹴りを生み出す。

transfer training の method を簡単に紹介しておきたい。
先ず、前屈立ちでしっかりと構える。重心を前脚に7分程度乗せ、膝でしっかりと踏ん張る。
両手は肘を軽く脇に付け、肩の力を抜き、両拳で顔面を guard する。目線を下に向けた時、前足(軸脚)の膝の先端と前足(軸脚)の親指先端が一致するくらい前足(軸脚)の膝を折り、上体を支える。
順突き(追い突き)・逆突きの一本突きの training から始める。重心の上下動を最小限に抑え、すり足で真っ直ぐ前方へ足を運ぶ。step した足がきちんと着地して、十分に重心を移動させ腰に筋力( torque )のタメを造ってから突き動作に入る。

beginner・intermediate・advanced・expertと段階を経て step の着地と同時に突き動作ができるように training をする。step した軸脚から伝わる瞬発力を膝・腰・体幹・肩・肘・手首へと上手く連携させる rhythm sense を体得する。
beginner は、最初から step と同時に突き・受け・蹴り動作を開始すると十分に腰の torqueのタメ込みができない為、腰の開きと同じ timing で突き・受け・蹴り動作に入ってしまい拳・足先に energy が伝わらない unbalance な form が身に付き安いので配慮した training が必要である。

蹴りの transfer training では、更に high-level な重心移動・瞬発力の連携動作が必要になる。特に、軸脚の筋力の有効活用である。
蹴りに於いては、重心を上方に移動させなければ蹴ることはできない。
構えた位置から maximum に軸脚の筋力を腰・体幹・膝・足首へと上手く連携させることは簡単なことではない。根気よく日々鍛錬することである。

transfer training の手順

1.a head ( 前方)への突き
 順突き・逆突き・連突き
2.a head(前方)への受け
 上段受け・外受け・内受け・下段払い
3.a head(前方)への各受けからの突き
 上段受け逆突き・外受け逆突き・内受け逆突き・下段払い逆突き
4.a head(前方)への各受けからの連突き
5.a head(前方)への各受けからの連突きの training を master したら、
 backward (後方)への transfer training を1~4に沿って lesson する。

【突き・蹴りの切れとは、、、?】

前回、私は、outside 45度・outside135度から矢で刺すような蹴りは、最も鋭角に head
が入ってくる為に block されにくく crash force も強いと述べた。このことは、円運動の接線加速度の原理に基ずくものである。

様々なスポーツで「 切れ ! 」という表現( phrase )を用いて解説されることは多い。
野球では、高校野球・プロ野球にかかわらず、解説者がよく用いる phrase である。
「 今のストレートには切れがありますね、、、、」
「 あのスライダーは切れがあり、高校生ではなかなか打ち崩すことは難しいでしょうね、、、」
などと、野球界では普通に良く用いられる phrase である。
では、切れのあるストレート・切れのあるスライダーとは科学的にどの様なボールを示すのか?
また、切れのあるボールを投げるピッチャーの身体動作は科学的にどの様な動作を示すのか?
野球界では、この「 切れ ! 」という phrase にある一定の科学的論証が示されている。

ピッチャーにしろバッターにしろ、身体とボール・身体とバットという2つの物体の持つ要素
の integrity (整合性)から力学的根拠を示している。
ピッチャーでは、投球動作とボールの回転数がその根拠となっている。
「 球速の大きな変化 」は、バッターからすると timing が取りづらく打ちにくい。
そういう意味に於いては「 球速 」も「 球の切れ 」の要素の一つではある。
しかし、根本的な「 球の切れ 」という点では理論的には異なっている。
日常的に「 切れのある球 」を投げる投手も連投を続けたり、体調を崩している時には、
「 切れのある球 」が投げづらくなる。
このことは、「 切れのある球 」を投げる為には、生理学的要素も不可欠なことを示して
いる。

「 切れのある球 」を投げる投手の身体動作に着目してみると、「 切れのある球 」を
投げるピッチャーの投球動作には、ある共通点がある。
一つは、ピッチング form に躍動感( ballottement )があり、ボールの release point がキャッチャーに近い位置(ピッチャーの手からボールが離れる timing が遅い)であること。
ピッチャーは、ストレート・カーブ・スライダーなど多くの球種を投げ分ける。
しかし、球種によってピッチング form が変わることはない。
また、球種によって腕の振りの speed が変わることもない。
同じ form から同じ腕の振り角・speed で多彩な球種を投げ分ける。
二つは、投手の身体動作は軸脚・腰の回転・体幹・肩・肘・手首の torque を最大限にタメ込み、合理的に smooth に連携させ、且つ maximum に開放している。
このような身体動作がの連携が一瞬のうちに行われ、大きな「 ムチ動作 」を生み出している。
その「 ムチ動作 」によって手首が最大加速を示す時にボールを放す。
この動作によってボールに回転力が生じる。
「 切れのあるストレート 」を投げる投手のボールは、普通の投手に比べボールの回転数が多いという特徴がある。
同様に、カーブ・スライダーに於いても、その球種に最も integrity (整合性)のある回転数が生じる時、バッターボックス近くで急激に大きく変化するのである。

このような動作を動力学では、躍度運動(可加速度運動)jerk acceleration と呼ぶ。
jerk acceleration とは、単位時間当たりの加速度の変化率である。
数式を示すことは割愛させて頂くが、jerk accelerated motion 値が大きい程、そこには「 切れ 」という phrase で示される運動・動作が生じるということである。
逆に、jerk accelerated motion 値が小さい運動・動作では「 切れ 」という運動は生じにくいということになる。

このような運動・動作は空手道に於ける「 突き・蹴り 」といった運動・動作にも一致するものである。
つまり、空手道の「 切れのある突き 」「 切れのある蹴り 」の正体、科学的根拠は、ニュートン力学の法則に従う「 jerk accelerated motion 可加速度値の大きさ 」ということになる。

空手道の突き・蹴り動作には、多くの生理学的部分で可加速度運動が繰り返されている。
その多くは、足首・膝・股関節・体幹・肩関節・頸椎・肘・手首などを支える筋力の連携から生じているものである。
これらの関節群・筋力群が最も大きな可加速度値を示すように timing 良く連携していく時、そこには、身体動作に「 躍動感 」が生じると共に「 切れ 」が生じるのである。
「 切れのある突き・蹴り 」を行使する人の身体動作は具体的には、突き・蹴りの動作が開始されてimpact 時までの体幹の動きと拳先・足先の speed 変化が大きいということである。
単に「 突き 」が速い・「 蹴り 」が速いという動作とは異なるものであるが、可加速度値が大きい「 突き 」「 蹴り 」動作を行うことができる人の impact は 体幹の動きと拳先・足先のhead speed に時間差が大きい為、timing が取りづらいものである。
また、筋力・torqueの解放 energy が大きい為、crash force (衝撃力)も強い。

次回は、突き・蹴りの combination training の役割とその variation とは何かを紹介したい。

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